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上流工程における『要求定義』の重要性に関しまして

こんにちは。
アプリケーションサービス本部の根岸です。

前回はビジネスアナリシスの概論等に関して触れましたが、今回は『要求定義』に
関してお話したいと思います。

昨年度、検討チームを発足しまして、学習や研究を進めてきました。

私達は、要件定義の品質や効率化を考えることを重要改善課題としておりました。
 (要件の抜け漏れや後工程の手戻りの発生要因は何か。)

1.はじめに


 要件定義を成功に導くために必要な手法やスキルといった類の話は、様々な文献で色々
 と言われております。以下は一つの要素であり、あくまで仮説になります。)

 ①要求定義の方法論を確立する
  要件定義に至るまでの作業手順や内容に関する方法論を確立することで、要件漏れや
  後工程の手戻りといったことを抑え、失敗のリスクを減らすことができる。
  (自己流からスタンダード手法への転換)

 ②ヒアリングの技法を習得する
  ユーザーヒアリングでの認識齟齬や問題などを発生させない為に、基本的なヒアリング
  技法や観点を抑えることで、聞き漏れなどを防止できる。

 ③業務に関する図の表記法をマスターする
  業務フローやDFD、ER図、UMLの図を分かりやすく作成することで、文章よりも
  内容の曖昧さを排除できる。またユーザーと一緒に共有することで合意を得やすい。

 ④関連する業界や業務知識を習得する
  関連業界の動きや、業務の実態・ルールなどを知識として保持し、理解・把握して
  おくことで、要求の引き出しをしやすくできる。また事前に有識者等の知識を蓄積
  しておくことで要求の聞き漏れなどを防ぐことができる。

 現場では様々な課題がありますが、今回、まずは要件定義の前工程ともいえる『要求定義』
 という工程において、重要な観点やそれを実行するプロセスを確立する研究を進めること
 としました。

2.『要求定義』に関して


 『要求定義』とは以下のようなことを指します。

 ・顧客がこうしたい、こうなってほしい、という要望をまとめる作業。
 ・顧客がIT(システム)に望む機能や性能を洗い出し、整理する作業。
 ・顧客が抱える経営や業務上の目標・課題を解決する為に必要なことを明確にした上で要求
  を取纏め、手段をハッキリさせること。

 

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3.『要求定義』の全体的な考え方とポイント


 様々な文献にて『要求定義』に関する概要や手法を調べましたが、以下のような所がポイント
 になることが分かりました。

 1)BABOKの中で、知識エリア(要求アナリシス等)で考えられている基本思想やタスクがある。
   (要求の体系化、検証、妥当性検証) 

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 2)BABOKの中で、要求というものを整理・種別することが定義づけられている。
   (ビジネス要求、ステークホルダ要求、ソリューション要求、移行要求)

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   ※要求の仕分けに関しては、上記以外にも様々ある。決めれらているものでなく一律では
    ないので、案件特性に応じてやりやすい形でするのがよいと思われる。
   (例:経営者視点や現場視点での仕分け、業務やスコープといった観点での仕分け等)

 3)BABOKの中で、要求定義に関わる手法やテクニックのようなものも一部紹介している。

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 4)『要求定義』に関する具体的手法として、以下のようなものもある。
   (KT法、RDRA(リレーションシップ駆動要件分析)、ODSC、インタビュー手法、要求
    トレーサビリティマトリックス、・・etc)

 上記を踏まえて、『要求定義』というプロセスに必要なタスクと、観点を整理・抽出して
 取り纏めていくこととした。

4.今回の研究テーマの着眼点


 チームで上流工程(要件定義)の品質向上に向けて、ベースにしている考え方は大きく2つ。

 1)顧客志向の考え方の理解・整理
   ビジネスアナリシスの考え方やBABOKの理解と適用

 2)顧客要求の網羅的整理と要件化
   網羅的で効率的な『要求定義』に関する手法の策定

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5.上流プロセス改善における効果


 改善による全体的な想定効果を以下のように考えております。

 ①思考力の育成・向上
  日々の業務で、一般的体系に即した思考力の育成・向上が図れる。
  (なぜ?を繰り返し、やる事の意義を見つめ、整理する能力が身につく。)

 ②顧客満足度の向上
  顧客の課題やその背景を正しく理解し、分析することで、本質的な要求に着目した
  提案ができるようになり、顧客の信頼感を高められる。結果として顧客満足度を
  向上させることができる。

 ③要求の体系化と定型手法による要件定義品質の安定化
  一般的な体系に準じて論理的に要求が可視化されることで、網羅性や妥当性の検証
  がしやすくなり、要件定義での考慮漏れや後工程での手戻りリスクも軽減できる。

 ④継続した課題形成と新たなビジネスチャンスの構築
  顧客のめざすビジネス目標に対して、何を実現しどう貢献できたか、或いは何が
  足りなかったのかを振り返ることで、新たなビジネスチャンスを期待できる。

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6.最後に・・・


この1年、顧客志向や要求という観点に着目して、要件定義に向けてどういうプロセスを踏むべき

か、各スタンダードを研究・学習しながら現場で使える策をチームで検討してきました。

以下、今期の活動全般に関する個人的感想になります。

①BAとは顧客志向のこと。顧客の悩みや痛みをどうとってあげるかを一緒に考えるという行動
 が大事。それを行うことで、個人や組織の客観的な価値を上げることもできる。

②要求定義については、テクニックや手法は様々があるので、あくまでも現場にあった最低限
 のものを取捨選択することが重要。

③要求の落とし込みをきちんと行った上で要件化するだけで終わりでなく、それを後に活かして
 いくことが重要。
 (要求というものを基本ベースにして後工程でのINPUTとして活かしていくことで、後工程に
  おける品質安定や手戻りリスクを抑えることができると考える。)

④顧客の為に何を考えられるかと、それに紐づいて提供する仕組みの両方が重要で、それが顧客
 に対する価値の提供であり、本当の意味での貢献となる。

⑤『ビジネスアナリシス』、『要求定義』という理論自体は、システム、ITに限らず普通に
 業務のなかで吸収すべき所も多く、業務特性や職種を問わず適用できる考え方だとと思います。

これまでも何気なく個人でやってきたことかもしれませんが、要求を体系的に整理することと、
それを繋げていくことをしっかりやることで、その後の作業も効率的になり、一定の品質が
担保されるようになると思います。

是非一度、こういった視点で改めて現状行っている作業をいい意味で見直してみるのはよいか
と思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。