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3Dプリンタやってみた

みなさんこんにちは、グループC&I本部の岡本です。
普段は雑誌の送品に関わるシステムや、物流拠点の機器を開発・保守しています。

今日はそんな業務とは直接は関係ないもののちょっと興味深い、3Dプリンタについて紹介します。
少し前に流行っていたので家電量販店などで見かけたことがあるかもしれません。
個人で持っていても出力する造形物がないからか、世間から忘れ去られているのではないでしょうか。

そんな3Dプリンタも進化して、10万円以内で購入できる個人用の機器でもかなり細かい造形まで出力できるようになっています。
前から興味があったのですが、最近の機種の安さに魅かれて3Dプリンタを購入してみました。

3Dプリンタには材質や硬化方法が異なるいくつかの方式がありますが、個人で手に入る範囲だと光造形方式(SLA)と熱溶解積層方式(FFF)が主流です。
今回は光造形方式の機種の中で手ごろな費用と力強い光源で海外で評価の高いEPAX-X1を選びました。

それでは、実際に3Dプリンタで出力するまでの手順を見ていきましょう。

1. ipadで大まかにモデリング

今回は弊社 日販テクシード のロゴを作ってみます。

3Dプリンタで出力するためには対象物の設計図である3Dモデルが必要なので、3Dモデルを作成します。
今回はフリーで使用できるipad用モデリングソフトShapr3Dを使います。直感的な操作で、少し触れば簡単な形なら作れます。
動画のチュートリアルも充実していて、英語が分からなくとも操作を学べます。

本来はこの後PCのモデリングソフト(Blender等)に取り込んで調整しますが、今回は形が単純なので飛ばします。

Shaper3D

2. スライサーソフトでデータを整形

さて3Dモデルは用意出来ましたが、そのままでは3Dプリンタに取り込めません。
3Dプリンタはそれぞれ出力できるサイズや、材質など制限があり、
3Dプリンタで出力するためにはそれらを考慮して出力形状・サイズに応じた支えが必要です。
プリンタメーカーが推奨しているフリーのスライサーソフトChiTuBoxで層ごとにデータを整えます。(=スライスする)

slice3

3. プリンタにインポートし、出力する

USBメモリにデータを保存して3DプリンタEPAX X1にスライスデータを転送します。

使用する材料はUVレジンといって、紫外線を当てることで硬化する液体です。
手芸をする人は知っているかもしれません。これをバットに流し込んだら準備完了です。

出力指示をします。

EPAX-X1

4. 待機

完成するまで待機です。
光造形3Dプリンタは薄い層にUVライトを数秒当てて凝固させ、アームを動かしまたその上に次の層を重ねて出力するため、
出力の時間は出力物の大きさではなく高さに比例します。

今回は2.5時間ほどで出来ました。
今回は出力物は高さ35㎜程度でしたので、層に換算すると35㎜(高さ)/0.05mm(層の厚さ)=700層になります。
逆算すると1層にかかったのは13秒です。露光時間は8秒でしたので、アームの移動に5秒かかっていることになります。
(正確には初期層の露光時間を考慮しなければいけませんが)

機種によってかなり違いが出る部分なので、プリンタの設定をよく見ましょう。

5. 出力完了し、取り出し洗浄

出力物に固まっていないレジン液が付着しているので、台から取り外し、水で洗浄します。(今回は水洗い可能なレジンを使用しています)
液体UVレジンに触れるとかぶれる・アレルギーになってしまうので手袋必須です。
綺麗になったら、最後に太陽に1日程度当てましょう。

仮硬化されたレジンが太陽の紫外線でしっかりと硬化します。
時間がなければ専用のUVライトを使用しても大丈夫です。
その場合は光の当て方にムラがあるとひび割れの原因にもなるので気を付けます。

output_before

6. 完成!

ようやく完成しました。
塗装もできるのでさらに遊べますね。

out

7. 業務での活用を模索

今回はロゴ作成を紹介しましたが、業務での応用も考えてみました。
※お客様端末のため、仔細は正確ではありません。

私が保守している物流現場では人・物の往来が激しく、オフィスより過酷な環境で制御用のパソコンや周辺機器を稼働させなければいけません。
その中にバーコードスキャナがあります。高い頻度で使用されるため消耗が激しい機器ですが、改善の余地はあります。

scanbefore

上図のように現場のパソコンに設置しているスキャナは純正パーツだとコードが正面に向きますが、作業者に接触して業務を妨げるため後ろに折り曲げてしまいます。
意図しない方向に引っ張られたコードは製品の固定では支えられず外れて接続部に負荷をかけてしまい、結果として接触不良や断線がおきます。

scanafter

そこで、緩やかに曲げてコードの負荷を下げながら後ろに回るようにするパーツを試案してみました。
レジンは硬化すると十分な強度になるため、負荷が分散する構造にすれば業務に耐えられるのではないでしょうか?

もし機会があれば実際にお客様に提案してみたいですね!

まとめ

いかがでしたか?
細かな業務用途で見ていくと純正パーツではもう一歩手が届かない改善も、3Dプリンタで安価に専用パーツを作って実現できるかもしれません。
アイデア次第で3Dプリンタの価値はぐんとあがるでしょう。今後も色々模索していこうと思います。

以上、楽しい3Dプリンタでした。

◆今回登場した機器・ソフト